「森の養母」とも呼ばれる豊かな森をつくるブナ。
強くしなやかな材を使い、広く大きな座面と包み込むような優しい背あたりの椅子ができました。籐張りの座面にはお気に入りの敷物を組み合わせてお使いください。
素材 木部/国産橅材 座/籐シート
W595 D555 DH725 SH410
座面サイズW445 D385
設計製作 remix 渡部継太
耐久試験済み
この椅子づくりにはいくつかのきっかけとタイミング、そして飛騨という場所だからつくることが出来たストーリーがありました。
飛騨には広大なブナの森が広がります。ブナは粘りがありしなやか、特にテーブルの脚や椅子の脚、背などに最適な材料として古くは家具の製造で多く使われていました。しかし、色味やサイズの安定したビーチ材を代用品として海外から輸入する様になり、家具としての使用はほとんどなくなってしまいました。
広葉樹林業により森から切りだされるブナは、紙の材料や菌床キノコのおが屑として家具材料と比べ安価で出荷されています。身近にあるものが最適なものであるのであれば使わない手はないですし、何よりブナの木を家具材料として使うことで森の価値が上がることにつながります。
以前製作していたウインザーチェアは座面と笠木(背もたれの上の木)が桜や栗、クルミなどを使用していましたが脚や背は粘りの強いしなやかなブナで製作していました。もともとのウインザーチェアは全体が塗装されているのでわかりにくいのですが、調べてみるとパーツによって部材をかえており適材適所で木材を使っていた事がわかります。
一口に「家具」と言ってもいろいろとジャンルがあります。木と暮らしの制作所は天板が得意で、ほかにも壁面家具が得意なメーカーさんもあれば、小物が得意な会社や作家さんがいる。それぞれに使用する機械が異なり、積み上げられるノウハウも違ってくるわけです。
そして制作に関して椅子は最も難しいジャンルと言っても間違いではないと思っています。椅子は体を支持する家具であり、様々な体型の人にとって心地よい座り心地にするには角度や高さ幅や位置などが複雑に関係してくるのです。
前項で木と暮らしの制作所が以前製作していた椅子をすこし御紹介しましたが、ローカルでシンプルなデザインのため使用する機械は少なくて良いものの、その分手作業が多いことが難点でした。
注文が来れば来るほど他の製品の納期が間に合わなくなると言った悪循環を産んだために制作が困難となり、外部で制作出来る場所を捜しましたが、手作業が多過ぎるために上手くいきませんでした。
今回の椅子は自分たちだけではつくれない!
そこで椅子づくりにおける最高の仲間と共同で開発するに至りました。
渡部継太さん(ケイタさん)は木と暮らしの制作所と同じく「飛騨の木工房の会」(飛騨の家具®︎を持つ協同組合木工連合会の協賛会員)のメンバーです。
ケイタさんの椅子はどれもが座った瞬間に「いい椅子」というのがわかります。背当たりがキャッチーで滑らかな手触り。背の高い人も小柄な人も受け入れる無理のないデザイン。そして何より座った瞬間に誰もが「あっ」となります。
「今回こんな椅子が作りたいんです」と要望をたっぷりつめこんだまとまらないデザインイメージから、要素を明確にしたすばらしいプロトタイプを作ってくれ、そこから「ここはもうすこし薄く」「角度をつけた方が」「面取りはこっちの感じだと」と面倒な加工や細かな修正をくりかえし、今の「Mother」が形となりました。Motherやけいたさんの事は詳しくNOTESに書こうと思うのでぜひ読んでほしいと思います。