木と暮らしの制作所

ONLYが生まれるまで

ONLYが生まれるまで

ONLYが生まれるまで

今までセミオーダーで受けれなかった
希少な樹種や需要が無いとされて市場に出なかった樹種を天板にする
moricaraの新たな取り組みである「ONLY」

「ONLY」が生まれたきっかけについて
阿部さんにお話を伺いました。

moricaraについて

3つの樹種の在庫

会社立ち上げ当初に始めた「セミオーダー家具の販売システム moricara」は家具小売店でオーダー家具を注文しやすいシステムを提案することで全国で20近い店舗とのお取引がスタートしました。木は切り出してからおよそ一年間乾燥させる必要があるので、セミオーダーに対応するためにはある程度の在庫を持っていないといけないんですよね。樹種をなんでもかんでもそろえておくことは保管しておく倉庫も限られているしお金もないから難しいので、樹種を山桜と栗とクルミの3つだけに絞っていつでも対応できるように一年間で使う分の在庫を持つようにしています。

派生

ONLYはmoricaraの派生として展開しています。moricaraが無ければONLYという考えにはたどり着かなかったし、moricaraがあったから気付いたこともあった。何よりmoricaraを販売してくれていた小売店の皆さんが共感し理解をしてくれたからこそ商品として世の中に流通することが出来ました。

2つのきっかけ

いい木なのに使えないキハダ

工房のある場所は大家さんでもある奥飛騨開発さんの土場があって毎日のように10トン車で丸太が運ばれてくるんです。

ある日、千明ちゃんが『阿部さん!今いいキハダが運ばれてきましたよ!買わないんですか?』って教えてくれたことがあったんですよね。窓の外を見るとトラックの荷台に色が綺麗で直径も十分あるいいキハダの木が積まれていて、天板にしたら良さそうな本当に綺麗な丸太でした。それでもキハダは『使えない』樹種、すごく悩んだけど買わなかったんです。

山桜の中に使えない朱里桜

あと材料屋さんにお願いして10数本の山桜の丸太をまとめて買った時のことなんですけど、製材乾燥されて板になって手元に戻ってきたら、一本分の朱里桜が混じっていたんですよ。少し曲がっているけど色がきれいで当時はすごく腹が立ったんですよね。いいテーブルになると分かっていても『使えない』材種だったんです。

使えないと決めていたのは誰か

しばらくして会社の敷地内にある奥飛騨さんの土場で材料を分けてもらうようになったんです。奥飛騨さんは広葉樹専門の土場を持っていて細い材から太い材、森から直接運ばれてくるものもあれば、市場で売れ残ってしまった材料なども引き受けていて。そこで、これは市場に出す木、チップにしてキノコの菌床、紙の原料、太いものは枕木、ピザ屋さんの薪、っていう感じでどんな木が来ても適材適所振り分けていて無駄がないんですよね。一方僕らが使っているのはたった3種類だけで、なんだか矛盾に気づきでモヤモヤする毎日。『使えない』と決めていたのは自分たちだったことに気づいたんです。

販売までの道のり

準備

発表までの2年間こっそりと準備を始めました。材料の調達と販売してもらえる仕組みを作らなければいけないと考えたからです。今まで手をつけていなかった樹種には家具には使えいないとして流通していなかった材料も多くありました。理由は見た目がイマイチと言われていたり、木材自体が柔らかく椅子にかかるような荷重に耐えられないといった理由で。天板には問題ない強度があり板にしてみるとかっこいいものばかりでした。

天板と同じ木で脚がつくれない問題

そのほかにもONLYを発表するまでにはいくつかの問題をクリアする必要がありました。今までのようにセミオーダーというわけには行かなかったので、一点モノで受け入れてもらえる仕組みを作ることと脚の問題が1番のネック。当時、山桜の天板に山桜の脚 クルミの天板にクルミの脚といったセットでの注文がほとんど。ONLYで使用する樹種は天板には使えるけど脚にするには強度が足りない柔らかいもの、とても希少で天板をつくる分しか用意できないような樹種もあり、天板と同じ樹種では作れない。そこでその問題をクリアするために粘りがあり脚材に向いたブナでつくる『ころび脚』をつくったんです。木としてもクセが少なくて天板を引き立てるのにはぴったり。もともとスツールの脚にも使っていたので相性はバッチリだと確信してました笑

ブナを使いたい

実はブナが使いたかったという気持ちもあるんです。飛騨の森にはブナがいっぱい育っていて、僕らが使っている広葉樹が伐採されてくるとブナも一緒に出てくる。むしろブナ林に山桜や栗や胡桃が生えていると言ってもいいほど。昔は曲木に使われたり飛騨の家具産業の大事な存在でたくさん使われていたけど今は安定して手に入る海外のビーチ材にとって変わられて家具で使われることはほとんどなくなりました。

ONLYを発表する一年前に「ころび脚」を発表して、まずは山桜天板にブナの脚、クルミの天板にブナの脚を合わせてもらって色々な樹種の天板のONLYを発表した時に受け入れてもらえるようにこっそりと下準備をしておいたんです。

魅力

無理をしない

ハギ合わせといえば天板の奥行きを広げることも大きな理由の一つ。木は時間が経て一枚板のように太くなると思っている人も多いと思うのですが、森の中には大きく育たない木も多く50年60年経っても直径25㎝ほど、それ以上は大きく育たな木もたくさんあるんです。そういった木をテーブルという最も木が見える形に変えるんです。でも無理にテーブル天板として良いとされる奥行き850mmや900mmに合わせることをやめました750mmの時もあれば1000mm近い時もある。木に無理をさせないように板の幅と枚数に合わせてサイズを決めています。

木を見る

あとは白太と赤太のコントラスを生かして接ぎ合わせる。木目が流れるように接ぎ合わせる。そういう接ぎ合わせをすることで木の持つ魅力を最大限に引き出してあげたいと思っています。

カタチに出来た2つの理由

さまざまな樹種を調達できる環境

moricaraONLYが商品として形にできたのには理由があります。

さまざまな樹種を調達できる環境

販売してくれる小売店さんの存在

そして販売してくれる小売店があったからこそ。こういうものが作りたいという思いがあっても材料が手に入らなければ、つくることはできないし、どんなにいい商品を作っても扱ってくれるお店買ってくれるお客さんがいなければ自己満足でしかないんです。そういったチャレンジをさせてくれた環境に感謝しています。

森の価値を高める

家具にならなければチップとして安く取引されていた木もたくさんあります。家具用材として木を少しでも高く買うことで、森にお金が戻るというか、、、森の価値が高まるといいなと思っています。

話してくれた人 阿部貢三