木を生かす現場の熱にふれる冬の二日間
森や木に関わる仕事に関心のある人と、飛騨地域の事業者をつなぐ「森のバトン インターンシップ見学ツアー」初めての冬開催。前回より高山市が主催となり実施しています。
これまでは家具材料の流通をメインとする「広葉樹」がメインでしたが、今回はより針葉樹にフォーカスした「森のバトン 針葉樹林業・製材業・大工の職場見学ツアー」のレポートをお届けします。
森のバトンとは
10年後も変わらず飛騨の木を使い、家具をつくり続けられるだろうか
「森のバトン」は、「10年後も変わらず飛騨の木を使い、家具をつくり続けられるだろうか」という問いから始まりました。
家具づくりには多くの人の手が必要です。木を伐採する林業者、製材・乾燥を担う工場、刃物を研ぐ職人、塗料屋さん、機械屋さん…。多くの専門家に支えられて、はじめて家具は形になります。
しかし、こうした企業の多くはホームページを持たず、ハローワークや縁故採用に頼っているのが現状です。 そこで、インターネットや求人情報だけでは伝わらない“現場の空気”をツアーで体感してもらい、希望者には後日インターンシップへつながる機会を提供しています。 ※就職のあっせんは行いません。
企画・運営は、高山市で地域産材広葉樹の家具を制作する「株式会社木と暮らしの制作所」と、飛騨地域で広葉樹の価値循環に取り組む「株式会社飛騨の森でクマは踊る」。 両社で始めた「森のバトン インターンシップ見学ツアー」は、前回から高山市が主催となり開催しています。
針葉樹のバトン
今回は「針葉樹」をテーマに、12月6日(土)・7日(日)の一泊二日で実施。
林業・製材・建築など、針葉樹に関わる現場をめぐりました。
初の冬開催となり、雪が残る厳しい寒さの中でしたが、現場で働く方々の熱い想いを直接伺うことができました。
訪問先
飛騨高山森林組合
逢坂建材
丸弘木材
渚工務店
笠原木材
1日目:森から始まる木の仕事を体感
13:00 高山駅集合
古い町並み側とは反対の白山口(西口)に集合し、バスで木の里団地※へ向かいました。
※木の里団地…1933年以降、駅前の木工関連企業が集団移転して形成された産業団地。
13:15 飛騨森林組合(林業)
高山市森林政策課 水橋課長
飛騨高山森林組合 柴田さん
新しく建て替えられた明るい会議室で、高山市森林政策課・水橋課長のご挨拶の後、飛騨高山森林組合の柴田さんより森林組合の組織や施業について講義を受けました。
森林施業プランナー※の資格取得を進め、森・施業者・山主(森林所有者)にとってより良い判断を組織内で共有できる体制づくりを進めているとのことでした。
※森林施業プランナー…複数の森林所有者をまとめ、長期的な森林経営計画を作成・管理する「森づくりの司令塔」。
14:40 間伐地の見学
胸高直径を測る平戸さん(森林組合
伐採について説明する八賀さん(森林組合)
雪の影響で予定地には入れなかったのですが、近くの間伐後の森をご案内いただきました。
下刈り・枝打ち・間伐と、人工林にはこまめな手入れが必要です。列状間伐が施された森では、遠目には細く見える木も、近づくと直径35cmほどの太さがあり、参加者から驚きの声が上がりました。
15:20 土場の見学(飛騨森林組合)
アイドルの年齢(24〜32歳)に近い丸太
木の里団地に戻り、森林組合の建物横に広がる土場へ。伐採後、検尺された丸太が整然と積まれていました。
案内してくださった柴田さんによると、直径が“アイドルの年齢(24〜32歳)”に近い丸太が建材として特に求められるのだそうです。森林組合では、林業(1次)だけでなく製材加工(2次)、流通・販売(3次)まで手がける6次産業化を進め、付加価値向上に取り組んでいます。
15:45 逢坂建材(製材業)
逢坂建材代表の中西さん
美しい桟積
二枚重ねで乾燥
一般流通しない特殊な建材や、こだわりの化粧材※を中心に製材加工を行う事業者さん。
※化粧材…床・壁など室内に見える材。強度だけでなく美観が重要。
土場には美しい桟積みが並び、桟跡が残らないよう二枚重ねで乾燥させるなど、丁寧なお仕事を見ることができました。
加工場では製材機がフル稼働。代表の中西さんは「従業員が17時ぴったりに帰れる働き方」を大切にしているとのことでした。
広い作業場はこまめに掃除されているように感じた
西日に照らされるフル稼働の製材機
16:30 丸弘木材(製材業)
製材を待つ大きな丸太
土場には梁材や柱材が積まれる
丸弘木材さんは祖父・父から続く三代目の中畑さんが担う製材所。
土場には大きな梁材が積まれ、製材機の横では直径60cmを超える丸太が順番を待つ迫力ある現場です。創業当初は広葉樹を挽いていたが、現在は針葉樹が中心とのこと。
中畑さんは建築を学んだ経験から「製材は完成形が見えにくい仕事」と感じてきましたが、現場に足を運ぶことで図面や仕上がりを理解し、「木が活きる挽き方」を提案できる製材へと10年かけて変えてきました。
製材について話す中畑さん
自前の乾燥施設
森林組合の材を仕入れ、地域の材木屋と協力して学校や高山駅の材料を納めるなど連携もあるそう。
「成果物に触れることが仕事の楽しさ」と語り、使われ方を想像しながら挽くことで品質も価値も高まるといいます。
現在メインとなっている針葉樹だけでなく広葉樹も製材するそうで、それぞれの良さを探り続け、「まだまだ発見ばかり」と学び続ける姿勢がかっこよく感じました。
車内で振り返り → 18:00 交流会
宿泊先「みづの荘」へ移動しながら振り返りを実施。
夕食は飛騨らしい食材を使った温かい料理とお母さんのユーモアとやさしさあふれるおもてなしで、冷えた体がほっと和みました。
お母さんからのお話でみんな笑顔に
飛騨牛や手作りの干し柿などがならびました
木を生かす仕事にふれる
09:15 渚工務店(大工)
明るい作業場
手彫りの看板
床一面に張られた原寸図
朝日が差し込む工場の床には、塔の原寸図が描かれた合板が敷かれていました。
代表の荒井さんは、図面や道具を惜しみなく見せてくださり、家宝だという五味春永の鋸を参加者に試させてくれるなど、サービス精神たっぷり。
「師匠も弟子もなく、お互いに学び合う」「僕と楽しく働きたいと思ってくれる人がいればぜひ一緒に」と語る姿が素敵でした。
作業場には床暖房が完備され、冬でも日中は半袖で作業することもあるそうで、大工の仕事のイメージが大きく変わる見学となりました。
渚工務店代表荒井さん
刃のくいつきが違うらしい
家宝の手鋸
10:40 笠原木材(林業・原木販売・製材・建築)
来年で創業70年を迎える笠原木材さん。
笠原木材さんは林業施業のほか、住宅事業部・リサイクル事業部を持つ事業者さんです。今回は、リサイクル部門を担当する桂川さんと住宅を担当する水口さんに案内していただきました。
様々な木材が集まる土場
地域最大級のチッパー
チッパーについて話すリサイクル事業部の桂川さん
まず、リサイクル事業部の桂川さんから、木材を余すことなく使い切れるように残材を含め様々な出口をもつ事など循環する仕組みをお話しいただきました。リサイクル部は、解体材や建設現場から出る生木をチップに加工する役割を担っています。道路を挟んだ下の工場では、木質バイオマス発電向けのチップを移動式チッパーで生産。形は不揃いですが、地域のエネルギーを支える大切な材料。一方、今回見学した工場では、製紙会社やボイラー用に向けた均一な“バージンチップ”をつくっており、皮をむいてから丁寧にふるいにかけられていました。土場には建築廃材や根株、地域の素材生産者から届く丸太が並びます。土を落としたり仕分けたりと手間のかかる作業ですが、ボイラー燃料や畜産用のオガコなど、新たな使い道も模索しているとのこと。産廃量は減ってきているものの、災害時の緊急受け入れなども行い地域を支える大切な役割を果たしていることが伝わってきました。
住宅事業部の水口さん
住宅事業部の水口さんから「かさはらの家」のショールームをご案内いただきました。薪ストーブで暖められた空間はとても快適で、木の魅力が存分に感じられます。伐採した木を建材からバイオマス原料まで余すことなく活かす、循環型の取り組みが印象的でした。
11:15 ふりかえり・相談会 → 12:30 終了
笠原木材のショールームで振り返りを実施。飛騨への移住を前向きに考える参加者もおり、地域への関心の高まりを感じます。飛騨地域は針葉樹にとって厳しい環境ですが、木と丁寧に向き合うことで価値を生み出している現場を実感できるツアーとなりました。
おわりに
1日目は木の里団地で林業・製材を学び、2日目は大工・工務店の仕事に触れる内容となりました。 これまで3年間継続することができました。これまで58名に参加して頂き、そのうちインターン希望者が22名、そして12名が飛騨地域で活躍しています。 森のバトン インターンシップ見学ツアーは2026年も継続開催予定です。 内容をアップデートしながら、高山市さん・ヒダクマさんとともに、初めての方もリピートの方も楽しめる見学会をつくっていきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
INFORMATIONION
株式会社木と暮らしの制作所
〒509-4119 岐阜県高山市国府町広瀬町500番地
0577-77-9773
https://kitokurashi.com/
株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)
〒509-4235 岐阜県飛騨市古川町弐之町6-17
0577-57-7686
https://hidakuma.com/



